俺ガス
15歳のサバトラの雄猫
争いは好まず・・・
今年もあとわずかとなった
それは昨年の12月28日のことだった・・・
天気予報では、翌日12月29日に急激に冷え込むと言っていた
28日の夜、俺の飼い主バキが夫おにゃじのリュックを抱え玄関で何かしていた
そのリュックがモゾモゾと動いていた
バキは開けることなくケージのある部屋に持って行った
そっと覗くも、ケージの中の段ボールのベットにモコモコっとちらっと見えるも、それが何かは俺には分からず・・・
しばらくすると、夫のおにゃじが帰宅し、第一声が
『大丈夫?』
と・・・
何が大丈夫なのか!?
そしてそのケージの中に何がいるのか、食卓の会話でわかった
それは2ヶ月前位戻るのだが、飼い主バキに話によると・・・・
ある夏の終わり、大きな煉瓦作りのマンションの入り口
一匹のさびトラが、地面から80センチくらいの高さのところに座っていた
飼い主さんを待っているのだろうと・・・
そして2ヶ月近くたった10月末、再びそのマンション前でさびトラと遭遇も、入り口横のマンションの植木から出てきた
人懐っこさそうな雰囲気から、外飼いの飼い猫だと思ったそうだ
それからたびたび見かけるも、日増しにこじんまりとしてきた気がし、そっとそばに行き膝に乗せ抱いてみたバキ。
毛並みもきれいで肉球も外飼いにしては柔らかい
ただ・・・
体重軽すぎ~
次の日、ちょっとカリカリを持って行って食べさせてみると、必死に食べた。
しかし、どう見ても野良猫ではなく・・・活動時間も昼間、それもほんの少しのテリトリーの中のみ
あっ、迷い猫かも!
と・・・徐々に慣れてきたら保護することを決意したバキは、偶然その駐車場で出会ったマンションの住人に話を聞いてみた。
すると、ある日あらわれるも、事故に合って瀕死の状態になり通りがかりの人がそばの獣医に運び一命をとりとめたとか・・・
そして元の場所に戻したという
それがこのマンションだったと・・・
近所では
“雑巾” と呼ばれ、何気に近所の人たちが餌をやっているとのこと。
マンションの前で飼い主さんを待つも、実はペット不可のマンション
思い返すとこの猫がバキに初めて会った時(つまり事故前)のほんの何日か前に、確かに引っ越しがあった。
まさかと思うが・・・置き去りにされたのか?
バキは保護することを前提に餌を与えたいと相談すると、すんなり承諾してもらった。
お水もおかせてもらって・・・
そして住人の方のご理解のおかげで、よく懐くようになってくれた。
保護を決め、キャリーケースを持っていくと
“雑巾” の態度が一変・・・よっぽどキャリーバックに嫌な思い出でもあったのだろうか?
バキはおにゃじの大きなリュックを借り、その中で餌をやることにした
12月の寒さが厳しければ厳しいほどリュックの中が心地よく感じたのか、
“雑巾”はリュックに入ることに警戒も違和感もなくなっていたようだった
12月28日、次の日は急激に寒さが増す
一日だって待ってられない!
そう判断したバキは、おにゃじに相談し保護を決行することとなったのだ。
いつものようにおにゃじの大きなリュックの底に餌を入れ、“雑巾”が当たり前のようにリュックに入ってカリカリを食べていた。
バキは、リュックのチャックをそ~っと締めた。
“雑巾”は暴れることをしなかった。
バキはリュックを自転車のかごに入れると、小さな鳴き声と共に時折動くも、家まで大暴れすることなく静かにしていたという。
そのままリュックからケージに移すも、ただただ怯え動こうとせず・・・
泣き叫ぶわけでもなく、じっと段ボールに身を埋め何を思っていたのか?
お正月明け病院に行った
“雑巾” は、ほんの2Kしか体重がなかったというが、病院でも大人しいとても良い猫だったという。
おにゃじが名前をつけた
『 “雑巾” なんて失礼だよね~、物静かないい子だから“侘びさび”からとって、 “わび” にしようね~』
と、
“雑巾” 、いや
“わび”に語りかけていた。
徐々に慣れ、ケージから出て生活し始める
ベランダにでるのが好きらしいが、やはり飼い猫だったためか決してベランダを越して脱走なんかする気配もない。
ただ・・・決まった時間にベランダや玄関先で誰かを呼んでいるかのように鳴く。
元飼い主さんの帰宅時間なのかもしれない。
考えてみれば、
“わび”からしたら保護ではなく拉致監禁だと思うだろう。
事故の影響からか、右の顎が不便そうでカリカリは丸呑みし、缶詰はほんの少しトロトロに水で伸ばしたものを食べる。
ここ最近は、ささみなどを一旦ペースト状にするとバキの手から食べることができるようになったが、内臓も弱っているのかすぐ戻す。
それでも片手で持ち上げられた体も、それなりに大きくなり両手ででないと抱えられないくらい体重もかなり増えた。
あれからもうすぐ1年になるが・・・
俺たち(俺と姉グレ)とわびは、徐々に距離が縮まり仲良くなくとも空気のように過ごせていた
本当は今頃仲良く静かに過ごしているはずだった
しかし、そんな雰囲気は9月1日を境にガラッと変わってしまったのだが・・・それは後日
現在“わび”は、保護したバキより、夫おにゃじに懐いている
足音がすると玄関先で待ち、おにゃじに毎日ブラッシングを要求する
俺だってブラッシング好きなのに、今我が家で一番ブラッシング独占しているのは
雑巾と呼ばれていた保護猫“わび”である