『誰もかまってくれない・・・去年なら白川と大谷がいたのに』
以前・・・ある新人が、守備から戻ってきてコーチに質問した
しかし、そのコーチは質問に答えられず、いい加減なことを言ってごまかした
その頃から、その新人はプロを舐めはじめたのかもしれない
人気があっても、1軍で大活躍したとしても、指導力があるかないかは別の話である・・・
俺ガス
今年の鴨川キャンプ、今俺は記録として残しておきたい
知り合いのご婦人が
『“これだけやった!”っていう自信がみんなを強くさせるのね』と・・・
中には監視下に置かれたおかげで、気付いたらがんばっていたって選手もいた♪
2月1日夕方
雨脚が強くなってきた
きっと昨年の選手達だったら、さっさと引き上げホテルに戻っていたことだろう
しかし今年は・・・
監督の狙いは?
鴨川に到着・・・昨年とはちょっと違う活気を肌で感じながら選手達を見学する
その子に限っては、昨年同様のん気だった
『止まってるボールだから簡単だよ~それにティー好きだし~♪』とか言ってるかも
となりは動いているボールだけどね~
相変わらずのその子は、揺らめきながら・・・
そんな57番を鋭い87番の視線が捉えていた 獲物はまだその鋭い視線に気づいていなかった
その子は先に走塁練習をしていたB組に合流
走塁練習に参加
走塁練習が終了すると、みんなマウンド方向に・・・
しかしその子は、サードベースに立ち止まり 『ねえねえ、代田コーチィ』と話しかけ
真面目な代田コーチが質問に答える それも体で
バキ曰く
『あ~、代田コーチダメじゃん、
それはケンちゃんのいつもの手~!』と
そう、このときみんなはお片づけに入っていたのだ その子は質問という手で、お片づけをしなくて済んだ
しかし、それを見逃さなかった男がいた! さすが監督である・・・じんわり獲物を追い詰めていく
ついに監督の支配下に・・・
まだ最初は簡単なアドバイスをしながら、 好きなように打たせ様子を見る
今シーズンからコーチに就任された長島コーチのもとに監督が行く・・・何やらグリップの話 後ろで『何してるのかな~?』と吉田くんが見つめていたが、俺も不思議な光景に思えた
そして57番の子が呼ばれた あ~だこ~だと教える
しかし、2人がかりで教えるも 本人なんか小首かしげて納得行ってないようだ
この時点で、かなりの雨が降っていた
監督が57番とトスバッティングを開始した あれ?監督が打つの?
百聞は一見にしかず・・・にゃのかな?
その子も一応やってみるも
何となく消極的である
バットの出方を監督がわかりやすく説明 刀で切るようにと・・・
その子も刀で切るように・・・
監督のトスする球を切る様に振って見る
そんな指導も彼にはあまり効果がなかったようだ なぜなら雨が・・・
俺
『賢治くん、わからないのかな~?最短距離でバットを出すようわかりやすい説明してくれてるのに・・・』
バキ
『違うよ!雨だから早く終りたいだけ・・・あの子は去年のままだから』
俺(監督自らの指導を無駄にしないでがんばれ!)
悩んでるのか、はやく終りたいのか?
そんなよくわからない態度など、監督には全く通じない
監督はひたすらトスし、 その子はひたすら打つしかない
フォームなんか関係ない
『ほら、打てー!』
『ここで5K落としてけ!』
『まだまだ!振ってー!』
監督の口から様々な言葉が投げかけられる
この日、知り合いの方が
『ケンちゃん、自主トレしてたのかしら?』と、その子の体つきや動きを見て心配そうにおっしゃっていた。
一応、俺は彼が自主トレをしていたらしいことを伝えたものの、俺も少々心配に思えた。
監督の
“ここで5K減らしていけ!”の言葉に、隣の毒舌バキが
『監督だって知ってるのよー!』
と、珍しく意味ありげのことを口走った
その子がバットを降ろそうとすると、すかさず監督がトスする為、ただただバットに当てていた
トスがスタートして20分ぐらい経過した頃、 もう気力だけで打っていた
ナイター設備もなく、雨脚も衰えていない中、その子の声は言葉になっていなかった
ちょっと高音で『ウギャ~◎※△#◇』
この叫びと共に倒れた
しかし、さすがコーチ陣
倒れたその子を見て
『大げさだな~、また芝居して♪』と・・・
横にいたバキがすかさず
『お~、よくご存知で』と・・・
その子は大の字になってみた しかし、誰一人心配などしない
心配どころか、さっさと起きてボール集めの催促をされる しぶしぶ上体を起こした・・・その子の背に今までにない何かを感じた
そしてコーチたちがボールを集めはじめた
その子は座っていられないと悟ったようだ
そして、しゃがんでボールを拾うなどできればやりたくないはずの子が しゃがんで必死に集め始めた
倒れたほどの子が、軽快な足どりでさっさとネットの後ろのボールも集め始める 横浜時代の
佐藤賢治が戻ってきたのかも♪
いや、彼の中の何かが変わり始めたのかも・・・
そういえば、横浜の先輩にも問題児だったと言われ、横浜の監督からも部の出入り禁止にされたと聞く。しかし、横浜の監督が辞めさせたくないほど彼の野球に惹かれていたようだ。
確かに入団当初の彼は野球が上手かった・・・他チームの野球好きのおじさんにも新人離れと褒められた
ボールを集め終わり、ここで終了・・・ではなかった
再び監督のトスバッティングが始まった
しかし、佐藤賢治くんの顔つきはさっきとは違っており、食い入るように監督の指示を聞きながら振る
そんな彼の態度は、監督の指導法も変える 監督自らバットを振ってみせる
雨と汗が彼を輝かせていた
もう真っ暗・・・冷たい雨も降り続き寒さが増していた
しかし、佐藤賢治くんのバットはシャープに振り切られ、そこだけ熱かった
ノックが終了したのは、トスバッティングがスタートして40分を越していた
しかし、佐藤賢治くんの疲れた顔は大人の顔に見えた
ほんのわずかかもしれないが、プロに目覚めてくれたことを信じたい
2日・3日の佐藤賢治くんに対し、監督が忙しい時はコーチがしっかり目を向けていた
目を離すと体操も手を抜くのですぐにコーチが注意する
こんな危うい佐藤賢治くんだが、高橋監督のもとでプロらしく成長をしてくれ
この日だけ・・・って言われないよう、賢治くんがんばってニャン♪
(すでに戻ってるのでは?と心配の俺)